仏果を得ず(三浦しをん)満足度:☆☆☆☆

仏果を得ず
主人公の健は、文楽義太夫節・三味線・人形劇から成る人形浄瑠璃のこと)の太夫(語り手)健(たける太夫として修行中の三十路男。ある日、師匠の人間国宝・銀太夫から、腕は良いが変人と評判の三味線・兎一郎と組むように命じられる・・・。
この本は面白い!!文楽のことなど何も知らない自分でもどんどん作品に引き込まれ、「いつかは文楽を観に行くぞ」と思っていた。きっと、ほとんどの読者がそう思うはずだ。
箱根駅伝もの『風が強く吹いている』を読んだときにも思ったが、作品の山場での三浦しをんの短めの文章は、読者を引き込む力が凄い。きっとこういうのを文章 “力”というのだろう。文楽を語る際に、その登場人物の人物像や心の動きを理解することに囚われてしまいがちな健だが、そのかいあって自分の解釈を確立した後の語りのシーンは「現代の東京(国立劇場)に、300年前の大阪の人物が時空を超えて存在する」と思わせる迫力で、感動で涙が出た。
偶然にも、読売新聞の「私の履歴書」(?)でも文楽太夫の方の連載が始まったのも楽しみ。お勧めです。