最後の相場師(津本陽)満足度:☆☆☆

最後の相場師 (角川文庫)
有名な歴史小説作家だと認識していた人が現代ものというか経済小説を書いているので気になって読んでみた。
モデルはこの本のタイトル通りに「最後の相場師」と呼ばれた是川銀蔵氏。名前は知っていてもどんな活動をしていた人なのかはよく知らなかったが、この本はそんな人にも判り易く書かれていたと思う。
主人公の佐久間平蔵(是川銀蔵氏)は、冒頭から既に80歳くらいの老人として登場する。しかし、この年齢以降に、大きな相場を3回も仕掛けたことが本作には描かれている。
実際、3回目で大勝利を収めた1982年の高額納税者番付でTopとなり、一躍名を知られたらしいから、自分が氏の名前を知ったのもこの頃かもしれない。
伝記モノや経済小説には有りがちな、説明部分の多さと会話部分の関西弁が気にはなるが、平蔵の大勝負の迫力がそれを忘れさせてくれる。
作中にも登場するが、実際、息子さんが世界的に有名な学者だったのに癌に侵された時には癌の特効薬を研究する企業を支援するために株を買ったりとか、数百億の儲けを得ながら買い占めた企業の経営に口を出すこともなく、ボランティア基金を設立したりした人らしい。