裏閻魔2(中村ふみ)満足度:☆☆☆★

裏閻魔2 (ゴールデン・エレファント賞シリーズ)
「主婦が賞獲り作家に」なったこともあって話題となった作者のデビュー作の続編。
前作では・・・瀕死の重傷を負った幕末の長州藩士・一之瀬周が、刺青師・宝生梅倖が掌に彫った「鬼込め」と呼ばれる呪いの刺青で命を救われる。
周は「鬼込め」の呪いの運命を背負うこととなり、明治から昭和へと激動の時代を刺青師・宝生閻魔として人目を憚るようにして生きていく。
傍らには常に、友人の遺児・奈津の姿があった。その奈津を狙うのは、周の姉の仇で同じ「鬼込め」の技を持つもう一人の「宝生」、夜叉。
少女だった奈津もやがて女として閻魔を意識しつつ、純愛を貫きながら彼の年を追い越し老いていく・・・。
本2作目では、舞台が戦後へと移る。
閻魔とその養女の奈津は敢えて離れ離れとなり、閻魔は失意の日々を過ごしていた。
その頃東京では、手の平に刺青がある人間の怪死事件が続き、そこに「鬼込め」の気配を感じた閻魔と夜叉は、それぞれ独自にかつての師・宝生梅倖に自分達以外の弟子がいなかったのか探しはじめる・・・。
「鬼込め」の恐ろしさを身をもって知る閻魔と夜叉は弟子を取らない主義なのだが、その魔力に魅せられて彼らに近づき人間らしさを失っていく登場人物は後を絶たない。
基本、彼らがストーリーの中心だが、個人的にはほとんど登場しなかった奈津が気になる。
また、前作では冷酷非情な敵役だった夜叉が閻魔の理解者の様に振舞ったり、いいように利用して切り捨てたはずの人物の子孫に逆に恐怖感を抱いたりと、らしくないシーンがいくつかあって、好感度(?)を増してきた。
全体としては敢えて子供に読ませる小説ではないと思う。が、読書好きな子ならば是非1作目から順に読ませたい本。