プチ・プロフェスール(伊予原新)満足度:☆☆☆★

プチ・プロフェスール
主人公の律は有名大学の理系大学院生、いわゆる「リケジョ(理系女子)」。学習塾でアルバイトしていたが、憧れていたヨーロッパの有名研究所への留学を実現するために塾の小学生・理緒の家庭教師を引き受けることになる。
理緒の父は小さな貿易会社を経営しているらしく、不在がちながらも一見して裕福な家庭らしいのだが、ちょっと変わっている。
何しろ、かわいい娘の誕生日プレゼントが半田ごて(それもプロに定評のあるメーカー、社名忘れたけど)だったりするのだ。つまり、理緒はリケジョに憧れていて、塾の先生の律を家庭教師にご指名したらしい・・・。
本作は日常の謎系の連作短編形式だが、最初は塾や近所の学校の噂話を科学的に解明する程度だったのが、後半には何と殺人事件が絡んでくる。でも、「共感覚」っていうのを取上げていたその短編が一番面白かったかな。
冒頭、子供の頃から律に大きく影響を与えた『不思議の国のトムキンス』って本が理緒の部屋にもあって、作中何度も登場する。読後『不思議の国のトムキンス』をアマゾンでポチろうとする読者は多いだろうな。
で、ラストで、本格ミステリーの刈り取り道具としてこの本が大きな存在感を放つ。ラストの鮮やかさと読後感の良さ、途中の理系(?)ネタの面白さもあって、殺人事件は登場しても子供に読ませたい本になった。