つくもがみ貸します(畠中恵)満足度:☆☆☆★

つくもがみ貸します
カバーイラストも似ていたので「しゃばけシリーズ」の1作かと思って読み始めたら、どうやら違ったらしい。でも似ている。時代物日常の謎系連作短編集。
江戸時代の深川で古道具屋兼損料屋(≒レンタルショップ)の「出雲屋」を営む、お紅(こう)と清次(せいじ)姉弟が主人公。
お紅は火事(だったかな?)で親を亡くした後に叔父の店に引き取られ、その店の養子が清次、という関係。何となくお互い意識し合っているが、お紅には「蘇芳」という名の忘れられない香炉があり、この蘇芳を軸に話が展開していく・・・。じゃなかった、忘れていた。
お紅と清次が営む「出雲屋」は古道具屋兼務なので、集まってくる古道具の中には、百年以上の時を経てつくもがみ(付喪神)という妖になったものも多い。
移動も会話もできるが、人間よりも長生きだから気位も高くて人間とは直接コミュニケーションをとらない主義、だがお紅も清次も彼らの言葉を聞くことができるので、好奇心旺盛なつくもがみを貸し出して、回収後に店内で好き勝手にしゃべらせ、それが謎解きに繋がる。
子供にも勧められる内容だが、惹かれあう姉弟という主人公の設定がネックかなー。
ラストの落ち着き方が万人向けとも言える安定感、切なさ要素がほとんどないおかげで読後感も良い。