夏休みの拡大図(小島達矢)満足度:☆☆☆

夏休みの拡大図
大学3年の主人公・百合香は、小学校時代からの親友・ちとせが就職を機に自宅を出る引越準備に突然呼ばれる。ちとせの部屋は引越当日とは思えない程ちらかった状態だったが、おとなしくてちょっと鈍いところがあるちとせをしかりつけながら手伝い始める。
そこへ、小学校時代に転入してくるなり「奇人変人木嶋くん」というあだ名がついた木嶋も、ちとせに呼ばれて手伝いに来る。3人で片づけているうちに、卒業アルバム等昔の記憶を呼び覚ます物が出土(?)し、その度に本作は当時のシーンへと切り替わる・・・。
百合香は小さい頃から陽性の性格。思ったことがそのまま言葉になってしまい、見たことをそのまま受け入れる。背景を慮ったり、相手の心中を察することができない。木嶋に「奇人変人〜」というあだ名をつけたのも実は百合香だった。
一方でちとせはほんわか天然に見えて、背景や真相を解き明かすのが得意。というわけで、回想シーンがある度に、自然に百合香はちとせに当時の真相を聞かされることになる。自分が早合点で同級生達を傷つけていたり、取り返しのつかない行動をとっていたことを思い知らされる。
個人的には、百合香が今更ながら10年前の自分を恥じて否定する様は読んでいてつらい。つらさを中和してくれるのは、数多くの小さなエピソードが終盤にきれいに収束することと、引越のシーンが明るいこと。