オーディーンの鴉(福田和代)満足度:☆☆☆★

オーディンの鴉
 所謂「防衛族」として頭角を現してきて近々の閣僚入りも噂される衆議院議員の矢島が自殺。東京地検検事の湯浅とその部下の安見が調べると、インターネット上に悪意のこもった矢島の個人情報や画像が氾濫していた。
 やがて湯浅と安見は「オーディンの鴉」と呼ばれる組織の存在に辿り着く。その直後に、白血病で入院している湯浅の娘の写真が実家に送られてきた・・・。
 タイトルの「オーディーン」とは北欧神話最高神の名前で、肩に止まっている2羽の鴉が世界中を跳び回って情報を集めてくるので世界中の情報を知っている。らしい。
 謎の組織「オーディンの鴉」は、ネット上の画像を加工してばら撒いたり根も葉もない噂を拡散させたり不都合な情報を削除したりと個々の活動は結構ショボいが、現実社会での様々な事例を見聞きしている読者にとっては、その匿名性と相まって恐ろしい存在に感じると思う。実際自分も映画のマトリクスや海外ドラマのシーンを思い浮かべながら読んでいた。
 作中の誰かのセリフに、クレジットカードやレンタルビデオパスモ等の使用履歴や街中の防犯カメラの画像等、個々は匿名の情報でも意図して集めれば見事に個人を特定する情報になる云々というのがあったが、本当にそうなんだろう。某ネット通販A社にアクセスする度に、自分の趣向に沿ったお奨めをされてちょっと怖くなる、その怖さが倍増する作品だった。